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乾シンイチロウ、アートへの表現と想い。

乾シンイチロウ氏が2022年4月よりスタートした101 OPENING EXHIBITION「BLOOM」を手がけた。今回の展示会は記憶を散っていく花弁に見立てた“記憶が消えることの意味・美しさ”を表現している。

大阪府東大阪市出身のアーティスト 乾 シンイチロウ氏。18歳から単身で渡米し、オレゴン大学芸術学部で学士 BFA を取得後、活動拠点を大阪に移す。2012年に幅広く活動をするため、アパレルブランド「guernika」を設立し、海外のアートフェアや展示会に参加するなど国内外問わずに活躍している中、101 WHITE SPACEで行われる約7年ぶりとなる日本での個展『BLOOM』について語ってもらった。(右:乾氏)

101のOPENING EXHIBITIONに選抜された気持ちはいかがでしたか?

乾:この話を聞いた時、新しくできるギャラリーという事で、それに相応しいクリーンで力のある展示会にしようと思いました。立地的にも一般のお客さんも多く来ると予想し、販売よりも楽しんでもらえるよう比較的大きなサイズの作品を多く展示しました。

ーー乾さんの作品や展示方法のインパクトが、これからの101の一つの基準になることも考えられますね。

乾:そうですね。101の今後の指針にもなるかとプレッシャーもありましたが、結果的に関係者の方やお客様にも喜ばれていて嬉しく思いますね。

日本での個展は7年ぶりとお伺いしましたが、心境はいかがですか?

ーー前回、東京で開催された日本での個展から7年も時間があきましたが、その間どういったことをされていたんでしょうか?

乾:7年前に東京で展示会をしてからは、自分に足りないものを学ぶため海外などの展示会やアートフェアに挑戦していました。時間をかけて現代アートに挑戦する準備もでき、日本でも個展をしたいと思っていたところで今回の展示の機会をいただきました。これを機にどんどん日本での展示会の機会を増やしていきたいと思っています。

ーー元々単身でアメリカに渡られていて、再び海外で学びたいとなるほど、やはり日本と海外のアートに関する市場や認識の違いは大きいですか?展示に関する違いもあるのでしょうか?

乾:個人的な趣味や思考も入りますが、本場のNYやロンドンなどのギャラリーで展示されている作品は圧倒的な存在感、高級感、そしてシンプルなコンセプトでした。
そして人がアートを買うというハードルの違いや、国としてのアートの取り組み方が全然違いました。海外では富裕層が資産としてアートを購入すること以外にも若い人がアートの購入に挑戦している姿も多く見かけました。日本はまだまだアートを買うという文化が定着していないので、日本人アーティストにとって、まずクリアしなければいけない難しいポイントだと思います。

今回の個展「BLOOM」の展示作品にはどういった想いで制作されたのでしょうか?

ーー海外での経験を踏まえて、今回の個展ではどういった展示内容になっているのでしょうか?制作にあたっての想いをお聞かせください。

乾:先ほど言ったように、まだまだ日本ではアートへの理解や購入のハードルが高いため、その入門編的な入口としてアパレルに落とし込んだブランドという形にして作品を提案しています。今回の展示会も一般のお客様に楽しんでもらえるよう、難しい作品から見た目で楽しい作品まで展示する事にしました。

ーー確かにそう言われてみれば、入り口入ってすぐの所にはバッグにペイントしたアパレルに関する作品「Fashion Is dead」「Short cake」「Paprica」が続き、今年の干支である虎の作品「Tigar」やどこか見覚えのあるキャラクターをモチーフにした作品「Yellow Monsters」など、ローコンテクストでダイレクトに心をワクワクさせてくれる作品が続き、その奥に進むと少しハイコンテクストなオーロラフィルムを施した作品が続くという、段階的にアートの奥深さに引きずり込んでいく手法が見えてきますね。

ーー全ての作品においてどういった捉え方や向き合い方をしてもらいたいですか?

乾:アートはファッションと違って年代やスタイルなど形式に囚われない所が好きなポイントなので、ジャンルに囚われず感覚で向き合ってほしいです。
guernikaというブランドは作品を外に持ち運ぶといった新しいストリートアートの提案でもあるので、是非そういった意味でも多くの方に知ってもらいたいですね。
今後展開したい現代アートに興味を持っていただくきっかけになればと思っています。

現代人とアートの関係性について、今後どうなっていくと思われますか?

乾:今スマホのアプリで簡単に写真を撮影したり、加工したり、ひと昔前の人が時間をかけてやってきたことが簡単にできる時代になりました。もちろん簡単にできる分、情報として流れていくスピードも早くはなってきましたが、NFTの登場などアートに関心を持つ人も増えてくるのは嬉しく思いますし、表現のレベルも向上する事を楽しみに思っています。
ただ誰でも簡単に表現できるため、シンプルに本質を捉えた作品がより評価を得る時代にもなると思うので、そこに挑戦していきたいと思います。

ーー誰もが表現者であるこの時代に、作品の提供者であるアーティストと受け手である生活者の関係性はどうなっていくと思われますか?

乾:極論、アートやファッション、デザインは生きていく上で必要はないと思います。
ただ、アートは自分を俯瞰で見るツールでもあり、心の余裕を産む哲学でもあると思っています。アートの価値がもう少し認められる社会になれば、より幸福度の高い日本になれるかと思います。

ーー日本の幸福度は世界に比べて低いですよね、、、私もアートをきっかけに内在する自分の本質と向き合う人が増えるといいなと思います。

デザインとアートについて

ーー少し話は変わりますが、私自身はデザイナーでして今回の101のブランドデザインと展示会のツールを担当させていただきましたが、自己表現が大切な現代社会において、デザインはできても自分らしさを表現することが難しいと思っているクリエイターは数多くいるのかなと思っており、アートの思考法みたいなところを教えていただけませんか。

乾:デザインは過去の経験や事実の組み合わせであり、アートは人間の本質的な感覚の抽出だと思います。時代を切り取るという作業は同じでも、生み出す引き出しは根本的に違うと思います。
アウトプットで言えば、ゴールにお客さんがいるかいないかも大きな違いだと思います。
アートで言うと、売れる作品を狙って作る事もあると思いますが、一般のお客さんが理解できないことも評価の一部になるのもアートの魅力ですね。

ーーお客さんのいないデザインはあり得ないので、そこは根本的に違いますね。やはり、自分と向き合い「自分とは何者か?」を常に問いただすことが大切なことなんですね。

乾さんの今後の展望はどうお考えですか?

乾:今まではすごく個人的なテーマが多かったのですが、今後は人としてより大きなテーマを掲げて制作していきたいです。国内での展示の機会ももっと増やしたいですし、海外でのアートフェアや展示会にも積極的に参加して、現代アーティストとしての活動を深めていきたいです。NFTでの作品発表も新しい挑戦として取り組んで行ければと思っています。

ーーバーチャル空間でguernikaを出店してもおもしろそうですね。バーチャルスニーカーが140万で売れる時代に、ペイントされているイラストが動く服とか絶対かわいいですよね。そういった挑戦がアパレルのみならずアートにも表現の可能性や拡張性が広がっていきそうで、今後がより楽しみになりました。

今後の101に期待すること

ーー最後に、まだ始まったばかりの101に今後期待することはありますか?

乾:101はスペースも広く自由な表現ができる場ですし、多くの才能が集まる場になってほしいと願っています!

ーー乾さん、ありがとうございました!

【BLOOM】は5月8日(日)まで、37日間の開催ですので、ぜひお越し下さいませ。

入場料無料/写真撮影自由です。
※SNSに投稿の際は、ハッシュタグ(#101BLOOM)をつけて投稿して頂けるとアーティストが喜びます。

展示会の詳細はEXHIBITIONよりご覧くださいませ。
皆様のご来場、心よりお待ちしております。

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